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【2024/05/19 00:15 】 |
020 SS「濡れ縁」三話
信じられないくらいでっかい広告が表示されるようになったので見逃す方もいらっしゃるとは思われますが、右下に「つづきはこちら」っていうのがあるのでそちらから!



三話は前半と後半で一ヶ月のタイムラグがありました。

ちょっと方向性固まってきたので四は早くあげられるといいな。

つなき、辻、をがわ。







つなきの頭部が、をがわの胸に。

髪がまばらにシャツの上に散る。温かくて重い。
普段は見る事のできない角度から見るつなきは、をがわにとって一層特別な存在に感じる。
先端へ行くに連れて細くなるまつ毛や、鼻筋の通り方は、つなきそのものだ。

胸が痛む。奥だ。感情が、みるみるうちに溢れ出て、をがわを襲う。


(つなきが好きだ)


をがわの腕の中に舞い込んで来た天使を、藁でできたねぐらのように、柔らかく抱きとめる。
触れる部分ができるだけ多いように。

「……ふっ………」

息の詰まった、苦しそうな声。
辻がつなきの足先に触れて両手で解す。時折足首をぐるりと動かしたりと、マッサージのような動きも混ざる。

「辻…!何をっ…! 」

つなきもただ流されているだけではなく、掴まれた片足を振り払おうとしていた。しかし、空いている足で辻を強く拒否する訳でもなかった。

「しいて言うならただの悪戯だ。お前の得意分野だろう」

辻の手が艶かしく足首からズボンの裾に入り込み、侵入していく。

「……っ、辻、貴様っ…」


震えた声で身体を強張らせるつなきを、依然として無言でをがわが後ろから抱きとめる。


わがわは辻同様につなきの身体を侵食していくわけでもなく、ただ軽く抱きしめたままだった。
つなきが力尽くで暴れれば、をがわの腕は降り解けただろう。
つなきが、をがわの胸元で身体を捩じり、振り返って見上げる。
その目は、「味方をして」と訴えていた。

うっすら血管の浮き出た辻の手が、服の上からつなきの足をなぞる。あからさまに、つなきの性感を引き出そうとする動きだった。足首から、足の付根まで、ゆるりと。つなきの湿った声が漏れる。か細く、やめろ、と。

をがわは、この特異な状況に持って来た辻の意図が読めずにいた。

ただつなきを虐げて悪趣味に遊んでいるだけなのか。それとも、この場で無理無体に身体を開くのか。
とうに日は暮れて、日柱の陽射しが嘘のように外が静まっている。
食事は片付けられた。酒の瓶が空いた。三人の顔は赤くない。

辻が、をがわに向かって口を開く。

「をがわも、つなきとしたい、……だろう?」

口の端を吊り上げて笑う。

辻の答えは、俺もをがわも、つなきも楽しもう、と言うことだった。
つなきが、もう一度後ろにいるをがわの顔を見上げた。
をがわは支えていた身体を畳に寝かせた。そしてつなきの髪を撫でながら、唇横の頬にキスを落とした。






つなきのシャツのボタンを両手で外していく。

をがわの気持ちだけが先走って、指がうまく動かない。一つ一つを外していき、胸元がはだけられても直視はしなかった。一番下のボタンまでを、至極丁寧に紐解いていく。
つなきの身体が、曲線を描きながらも強張る。目には溢れ落ちそうな涙が溜まっていた。

それでも頬を濡らすまいと、瞼を閉じあえて天井に顔を向ける。
涙は溢れそうになっていたが、つなきは二人の行動をもう拒絶するような反応ではなく、観念して受け入れるかのようだった。そのことに、辻もをがわも気づいていた。
 
をがわがつなきの肩から二の腕にかけてを、何度も往復し撫でさする。
そして額や頬を中心に、愛情をたっぷり注ぐようなキスを送っていく。

辻はつなきの肋骨の下の脇腹のあたり、それと腿裏から膝裏までを愛撫していたが、しばらくするとズボンに手を掛けた。
ベルトのバックルをカチャカチャと外そうとしていた所で、つなきによる両手の静止が入る。

「明るいのは…嫌だ…」
 
薄く青い目を開いたつなきと、辻の瞳が絡みあう。
辻はつなきの右掌を軽く握ると、すぐに消灯をしに立ち上がった。
ふと、いい案を思いついたように辻がつなきとをがわに向かって言った。

「すぐ戻る」

「辻?」

笑みを浮かべながらをがわに目配せをした辻が、部屋の電気を消す。
室内の雰囲気がガラリと変わり、外から来る光がわかるくらいで、ほぼ何も見えない。

「今夜は月明かりが見えないな」

そう言い残すと、辻は部屋から離れて行ったようだった。廊下に響き渡る足音が遠ざかっていく。

をがわは、つなきの横に身を横たわらせながら、つなきの両二の腕を柔らかに抑える。
つなきは仰向けに瞬きを大きく繰り返すが、至近距離であるお互いの顔もほとんど闇に紛れて見る事ができなかった。

 
どうするべきか。
つなきも、をがわも、突然暗闇に置き去りにされたこの状況で下手に動くことができなかった。


相手に期待を任せていた部分もあったが、特にをがわは、つなきの気持ちが読めない。
望む相手、もしくはその辺の石ころのように取るに足らない相手なのだろうか?…オレ達は。

体重をかけることも退くこともできぬまましばらくそのままでいると、暗闇に目が慣れ、視界が広がり始めた。
をがわは、つなきを見下ろしながら、つなきの首筋と肩の間に片手を入れて撫でる。

 
「お前が嫌なら、オレはここでやめる」

 
をがわにそう言われると、つなきは少しだけ目を開いて驚いた。

しかし、すぐに目を逸らす。そして、ゆっくりと両手をあげてをがわの身体に触れた。
力が込められていないとはいえ、それはをがわを押しのけるのではなく抱きとめるような意味を持っていた。
少なくともをがわはそう感じ取っていた。

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【2011/10/14 01:53 】 | SS
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